フリッツ・ラング監督の「ハウス・バイ・ザ・リバー」は、かなり怖いです。

 フリッツ・ラングはオーストリ出身のとびぬけた才能の映画監督です。多くの映画人に尊敬されゴダールの「軽蔑」に実名で登場しています。ドイツが第三帝国に取り込まれる前、「メトロポリス」「M」「ドクトル・マブゼ」などすぐれた作品を生み出していましたが、ユダヤ系だったため危険を感じ、アメリカに亡命しました。そこからがすごい。他国の俳優を使い、ミステリーから西部劇、はてはB級映画まで手腕を発揮しました。「暗黒街の弾痕」「飾り窓の女」「死刑執行人もまた死す」「恐怖省」…上げたらきりがないほどの傑作ぞろい。最近、高額で見ていなかった「ハウス・バイ・ザ・リバー」がDVD10枚組になって発売されました。フィルムノワール好きの方は絶対のお買い得です。作品が返送され行き詰った作家とその弟。美しい妻に若いメイド。物見高い隣人。知的で魅力的と思って結婚した夫の変質とも思える隠れた顔が徐々に露呈していきます。細かく張り巡らされた伏線と陰影の素晴らしい撮影。最後まで息もつかせぬ緻密な展開はさすがです。下は「マン・ハント」からのワンシーン。雰囲気抜群です。
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