檸檬シネマクラブ今月はベルイマンの「野いちご」でした。
 「野いちご」はどの映画評を見ても傑作として名高いのですが、年齢によって評価の差が激しいのではと思われます。以前観たのは20代のころ。静かで地味な映画だという印象以外よくわからなかったのですが、最近になってこの映画の良さがそのままわかるようになりました。これはきっと加齢のせいだと思います。主人公は高名な医学者イサク。悪夢にうなされ目覚めは苦渋に満ちています。針のない時計、棺桶の中の自分の顔、若いころの苦い恋愛の記憶。妻と自分との不和をそのまま引きずった息子。頼ってきたその妻マリアンヌと表彰されるルンドまで同行することになります。道中であった三人の若者、自分と妻を投影したような夫婦。次第に心は洗われ人に対するや優しさや思いやりに満たされていきます。息子と妻が復縁に向かっていることを知り、幼いころの情景に夢は穏やかに変わっていきます。この老人の心境を描がいたのがベルイマン40歳のころ。それを考えただけでもすごい人だと感嘆します。経験則でしか考えられないのは凡庸な人の特徴かもしれません。
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