今月のシネマクラブは、ロッドス・タイガーの凄まじいほどの演技「質屋」でした。
 「質屋」は、なんで出してくれないのか不思議になるほどの作品ですが、このほどやっと復刻発売されました。「12人の怒れる男」のシドニー・ルメット監督日本公開は1968年です。ユダヤ人で強制収容所の生き残りソル・ナザーマンが経営するニューヨークスラム街の質屋。ポーランドでは大学教授。愛する家族に囲まれ幸せな暮らしをしていましたが、ナチスドイツにすべてを奪われ「生きる屍」となっています。彼の語るユダヤの歴史、屈折した人生観は、移民の店員の青年に語られます。まったく救いのない終わり方ですが、すぐに希望を与える昨今の映画と違い、ドーンと胸に応えます。幾多の希望を求め救いを懇願しても何も起こらず死んでいった人たち。歴史は70年で風化するようですが、まだ多くの人たちが生きていた時代でなければできない映画の一つです。クインシー・ジョーンズの音楽、映画界のもっともすぐれたカメラマンボリス・カウフマンの撮影も素晴らしい。なんといってもロッドス・タイガーを・観る・映画です。
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